まず経膣超音波検査やMRI検査で子宮筋腫や子宮腺筋症、帝王切開瘢痕部症候群の状態を確認します。それらの疾患により妊娠しづらい原因となっているか、妊娠中にトラブルを起こす可能性がありそうかについて検討を行い、妊娠前の手術が必要かどうか判断します。

年齢が若く卵巣機能が十分に保たれている場合には、手術を行ってから自然妊娠を目指したり、一般不妊治療を開始するのが一般的です。
しかし、子宮の手術を行う場合には、術前の薬物療法に要する期間が3-6ヶ月程度、子宮にできた傷が治るまで術後避妊をしなければならない期間が通常3-6ヶ月間あり、手術を計画してから妊娠可能となるまでに半年から1年程度の期間を要します。

そのため、卵巣機能がもともと低い方の場合には、手術を行っている間に卵巣機能がさらに低下し妊娠できなくなってしまう可能性があります。
また、術後に不妊治療をしている間に、また子宮筋腫などが再発するリスクもあります。

そのため、手術が必要と判断された時点で採卵を先に行い凍結胚を複数個確保した後に手術を行うこと (ECBS) を勧めさせていただきます。
ある程度の大きさの子宮内膜症性卵巣嚢胞がある場合には、妊娠中の破裂や感染のリスクがあるため妊娠の前に手術で摘出することが望ましいです。 しかし、子宮内膜症性卵巣嚢胞の摘出術を施行すると、正常な卵巣組織がある程度失われてしまいます。卵巣機能がもともと低い方や、子宮内膜症性卵巣嚢胞の手術歴がある方、両側の子宮内膜症性卵巣嚢胞がある方では、手術による卵巣のダメージが顕著となり、術後に閉経してしまう場合もあります。

このため、妊娠前に手術が必要な子宮内膜症性卵巣嚢胞をお持ちの方で、手術による卵巣のダメージが大きいと予想される方には、手術を行う前に採卵を行い、凍結胚を複数個確保した後の手術 (ECBS) を勧めさせていただく場合があります。

 いずれにおいても、子宮や卵巣の疾患の評価と同時に、精液検査を行いパートナーの精液の状態を確認することは大変重要です。
精液の状態から体外受精での妊娠が不可欠な場合には採卵は早いに越したことはないため、卵巣機能等に関わらずECBSを勧めさせていただきます。 ECBSについてご相談を希望される方は、女性診療科・産科 不妊初診外来を受診してください。