筋層内筋腫と漿膜下筋腫は小さいものでは症状はないことが多く、大きくなると圧迫による便秘・頻尿・腰痛などの症状や不正出血、月経量が多くなる、貧血などの症状が出ます。
粘膜下筋腫は小さくても症状が強く、月経量が多くなる、月経痛が強くなる、不正出血などの症状の原因となります。また、妊娠を希望されている場合は、妊娠しにくくなったり、妊娠中に流産や早産の原因になったり、胎位異常、胎盤位置異常、常位胎盤早期剥離など様々な影響を及ぼす可能性があると言われています。
婦人科診察、超音波検査を行い、大きなものや手術を検討する場合はMRI検査を行います。大きな筋腫は子宮肉腫という悪性の腫瘍との区別が難しいことがあり、MRI検査の結果や大きさ、年齢、大きくなるスピードなどで判断をします。粘膜下筋腫や筋層内筋腫で子宮の内側に近い場合などは、子宮鏡検査を行うことがあります。
子宮筋腫の症状、場所、大きさ、ライフステージにより治療の内容は変わります。治療には、手術療法と薬物療法があります。無症状でも急激に大きくなったり、腫瘍内に出血壊死を伴う時などは、子宮肉腫という悪性の腫瘍も疑って手術を検討します。また、子宮筋腫が大きく、おなかの中の血管を圧迫している場合は、静脈血栓症(血管の中に血の塊を形成してしまうこと)のリスクも考慮し手術を検討します。
妊娠を希望している方、不妊症の方には、体外受精と手術を組み合わせた、包括的な治療(当科ではECBSと呼んでいます)を行うこともあります。詳細はECBSのページをご覧ください。
子宮全摘術 根本的に治すことを目的とする手術です。子宮本体がなくなるため、再発などの可能性がなく根治します。子宮筋腫の大きさや骨盤内の状況などにより、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援下手術での子宮全摘を行います。
子宮筋腫核出術 妊娠を希望する方に対し子宮を温存して子宮筋腫だけを取り除く手術です。子宮の筋肉を切開して子宮筋腫を取り除くため、手術の時に出血が多くなる可能性があること、小さな子宮筋腫は取り残される可能性があり再発の可能性があることなどから、妊娠を希望する時期なども考えて手術を検討する必要があります。また、術後は一定期間の避妊を指示し、術後に妊娠した際には分娩方法は帝王切開術と指示される場合があります。子宮筋腫の大きさ・位置・個数などの状況により、開腹手術、腹腔鏡手術、腹腔鏡補助下手術での子宮筋腫核出術を行います。また、手術前に体外受精での採卵を行い、手術後に避妊期間解除後に胚移植、と不妊治療と組み合わせて手術を計画することもあります。
子宮鏡下子宮筋腫摘出術 粘膜下筋腫に対して子宮の内腔側から子宮筋腫を削り取る手術方法です。経腟的に行う手術なので、術後の回復が早いのが特徴です。粘膜下筋腫のサイズ、内腔側への突出の状況により子宮鏡手術が可能か判断します。子宮鏡手術で安全に行えない場合は他の手術方法を提案することになります。
偽閉経療法 内服薬、4週間に1回の注射薬、点鼻薬などがあります。女性ホルモンの分泌量を減らすことにより、子宮筋腫が小さくなり、子宮筋腫の症状が緩和されます。その一方、女性ホルモンの分泌が少なくなることにより更年期様の症状(ホットフラッシュ、めまい、肩こりなど)がでたり骨密度の低下をきたす可能性もあるため、保険診療での適応が6か月となっています。そのため、手術前や症状が重いときの一時的な使用や、閉経が近い年齢の方への一時的な治療として行われることが多いです。
低用量ピル 月経困難症などの症状緩和のために低用量ピルを服用することがあります。低用量ピル内服中でも子宮筋腫は大きくなる可能性があるため、定期的に子宮筋腫の状況を確認しながら内服する必要があります。また、喫煙している方や40歳以上では静脈血栓症のリスクが上昇するため、注意が必要です。
漢方薬・鎮痛薬など 症状緩和目的で内服します。症状に対して内服する対症療法なので、子宮筋腫の状況を確認しながら必要な薬剤を使用します。
子宮動脈塞栓術 子宮動脈から子宮への血流を止めることにより、過多月経の改善や子宮筋腫の縮小効果が報告されています。子宮を温存することができますが、血流を止めることにより子宮筋腫が壊死するため、壊死による影響への注意が必要です。また、手術療法と異なり、病理学的な評価ができないため、治療前に子宮肉腫などの悪性疾患の留意も必要です。妊娠前の治療報告もありますが、癒着胎盤や前置胎盤などの胎盤異常の報告もあり、安全性に関しては確立されていません。
集束超音波療法 子宮筋腫への有用性が報告されていますが、治療法として十分に確立されておらず、保険適応となっていません。また、当院では行っていません。