骨盤臓器脱の診断は内診台で診察すればわかります。
医学的な診断は、POP-QというスコアリングをしてStage I~IVで診断しています。
しかし、おおよその目安でいえば、内診ではじめてわかるような軽度なものはStage I、自覚症状が出てきて子宮や膀胱が腟の出口から前後1cmの範囲まで下がってきていればStage II、それよりさらに下がってきているものはStage III、腟が反転してほぼ完全に脱出しているような状態がStage IVです。
さらに当院では、cine MRIといって、おなかに力を入れたときの子宮の動きをMRIで動画を撮影する特殊な方法を用いて、診断の参考にするときもあります。
骨盤臓器脱の症状は、大きく分けて、臓器が脱出することそのものによる症状と、排尿排便障害の二つになります。
前者には、外陰部の違和感、臓器が下着に擦れることによる痛みや不正性器出血、性交困難などがあります。
後者は、残尿、頻尿、排尿困難(子宮を指で押し込まないと尿が出ない)、腹圧性尿失禁(お腹に力が入ると尿が漏れてしまう)などがあります。
骨盤臓器脱の治療は、大きく分けて保存的治療と手術の二つに分かれます。 保存的治療には、骨盤底筋体操やKagel体操と呼ばれる骨盤底の筋肉のトレーニングと、ペッサリーという器具を腟内に入れて脱出する臓器を支える方法があります。ペッサリーは長期にわたって留置すると、腟壁が炎症を起こして出血しやすくなったり、腟壁に埋没して抜去できなくなったりするため、何年も入れ続けるためには、慎重に外来で診察を定期的に続ける必要があります。
手術には、いくつかの方法があります。
腟から子宮を摘出し、たるんだ腟を切除して、緩んだ筋膜を縫い縮めて補強する腟式子宮全摘術+腟壁形成術は、以前から行われてきた方法で、腟からの手術でお腹に傷がつかないというメリットがあります。一方で再発率が40%程度あるというデメリットがあります。

また、腟の前側と後側を左右から縫い縮めながら縫い合わせる、腟閉鎖という手術もあります。この手術は、手術時間が短いため、合併症がある人でも比較的安全に手術ができるというメリットがあります。一方で、性交渉は不可能になり、また子宮癌の検査ができなくなる、というデメリットもあります

これらに対して、仙骨腟固定術は、人工のメッシュを腟の前後に縫い付けて、それを仙骨(背骨)の前にある靭帯に固定する方法で、Level 1の骨盤臓器脱に特に有効で、再発率が5%前後と低いことが特長です。
当院では、積極的に腹腔鏡下仙骨腟固定術に取り組み、2013年から先進医療として開始、2016年には保険が使えるようになりました。また、2020年にはロボット支援下腹腔鏡下仙骨腟固定術も保険適応になり、当院でも取り扱いを始めております。