不妊症の原因

下記の5つに分類されます。
女性の卵巣において卵胞が発育し排卵に至る過程で、脳下垂体から分泌されるホルモン(性腺刺激ホルモンFSH, LHおよびプロラクチンPRL)が重要な働きをします。この3つのホルモンのバランスがくずれることにより、排卵障害がおき、不妊となります。また、排卵した後の卵胞からは、黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌され子宮内膜を妊娠に適した状態に保ちます。さらに、排卵後に基礎体温が高温となるのもこのホルモンの作用です。黄体ホルモンが充分に分泌されない場合には、高温期が短くなり妊娠の成立が困難となります。
排卵された卵子は卵管末端の卵管采とよばれるひだの中に取り込まれて、授精の場所である卵管膨大部へと運ばれます。子宮内膜症やクラミジアをはじめとする卵管内外の炎症、また子宮筋腫や卵巣嚢腫に対する手術あるいは虫垂炎など腸管などに対する手術の後に卵管の閉塞や癒着が生じることにより、卵管が正常に機能しなくなり、不妊の原因となります。
排卵期に性交渉により腟内に射精された精子は、子宮頸管の粘液中を泳いで子宮内に入ります。ここで、頸管粘液が少ない場合や、また抗精子抗体など精子運動を妨げる因子がある場合、精子は子宮内に入ることができず不妊の原因となります。
排卵後に卵管内で授精してから5-7日を経て、子宮内に輸送されてきた卵は、分裂を繰り返して胚盤胞と呼ばれる段階に至り、子宮内膜に着床します。この過程で子宮筋腫・子宮内膜ポリープ・子宮腺筋症などにより、着床が障害されると不妊となります。
性交渉によって腟内に射精される精子は通常約2-3億ですが、このうち子宮~卵管を通って授精の場である卵管膨大部に達することができる精子は、数10-数100程度と考えられています。最初の射出精子の数が極端に少ない場合や運動性が悪い場合は、卵管膨大部に達する精子はほとんどいないことになり、授精に至りません。

当院の不妊外来では、不妊の原因を精査して、患者さんの状態に適した治療法をご提案させて頂きます。

検査の内容としては、①内診や経腟超音波検査、②血液検査(脳下垂体ホルモン、甲状腺ホルモン、抗ミュラー管ホルモン(AMH)、血糖値、クラミジア抗体など)、③子宮卵管造影、④性交後試験(ヒューナー検査)、⑤精液検査などがあります。

月経周期に合わせて、必要な検査を1-2周期かけて行います。
検査終了後は、自然周期あるいはクロミフェンやrFSHなどの排卵誘発剤を使用して卵胞を発育させ、タイミング指導をしたり、排卵日に合わせて子宮内に濃縮した精液を注入する人工授精を施行したりします。

人工授精

このような一般不妊治療を数周期行っても妊娠に至らない場合や、検査にて異常を認めた場合には、IVF(体外受精)外来受診をご案内することがあります。IVFでは採卵により取り出した卵子と精子を体外で授精させ、授精卵(胚)を体内に移植します。

体外受精(採卵、胚移植)


当院のIVF外来は、体外受精を必要とするすべての方を対象としており、また当院は高次医療機関であるため下記のような方も積極的に治療しております。

子宮内膜症性卵巣嚢胞、子宮筋腫、子宮腺筋症などの婦人科疾患を合併しており、手術療法と不妊治療とを適切に組み合わせる集学的不妊治療を必要とされている方
悪性腫瘍と診断され、妊孕性温存を必要とされている方(詳細は妊孕性温存の項を参照してください)
卵巣機能・予備能力に合わせて、ロング法やアンタゴニスト法、低刺激法などの誘発方法を選択します。採卵は静脈麻酔あるいは局所麻酔下で行っています。

また、顕微授精(ICSI)やアシステッドハッチング法(AHA:透明帯の一部をレーザーにて薄くし胚のふ化を助ける)、SEET法(胚盤胞に至った周期の培養液をあらかじめ凍結保存しておき、次周期以降の胚盤胞移植周期に、移植に先立ちその培養液を子宮内に注入する)、2段階胚移植法(同一周期に分割期胚と胚盤胞を段階的に移植する)などを施行しております。

他にも、胚移植にむけて子宮内膜の状態を調べる検査(ERA, EMMA, ALICE)を施行したり、着床外来と連携して子宮鏡やMRI検査などを施行して着床を妨げる原因精査を行うこともあります。
また、着床前診断(PGT)も行っており、治療経過よりPGTの適応と判断した方にお勧めしています。(詳細は着床前診断の項を参照してください)

お一人お一人の状態や治療経過を考慮して適切な検査や治療方法をご提案させていただきます。