婦人科がんの治療は手術を中心として行われることが多いですが、一般的には子宮頸がんでは子宮摘出、子宮体がん及び卵巣がんでは子宮と両側の卵巣摘出が行われます。このような術式では妊孕性は失われてしまうため、強くご希望される方には妊孕性温存が可能な術式について検討をおこなっています。
妊孕性温存を選択することによりがん治療の経過が悪くなってしまうことは避けなければならないので、一定の条件を満たした場合に限ります。それぞれの病気について、大まかな条件は以下のようになります。

1.子宮頸がん
病変が子宮頸部のみにとどまっており、かつ腫瘍の大きさが2cmを超えない場合

2.子宮体がん
病変が子宮内膜にとどまっており(筋層浸潤のない)、かつ組織型が類内膜癌G1である場合

3.卵巣がん
I期の卵巣上皮性腫瘍の一部、すべての病期の胚細胞性腫瘍
子宮頸がん、子宮体がんおよび卵巣がんのいずれの場合においても、まずは手術前に十分な検査をおこない組織型や画像上の病気の広がりについてよく確認します。
実際におこなわれる術式としては、

子宮頸がん:子宮頸部円錐切除術(IA1期の場合)
準広汎~広汎子宮頸部摘出術(IA2期またはIB1期の場合)

卵巣がん:患側付属器摘出術(片側の卵巣・卵管の摘出)+大網切除術+腹腔内細胞診
(これらと併せて骨盤・傍大動脈リンパ節生検や対側卵巣生検をおこなう場合があります)です。

子宮体がん:子宮内膜全面掻爬(入院しての手術です)をおこない、子宮内膜病変の組織型を確認します。この結果で類内膜癌G1であった場合に子宮温存が可能となります。

子宮温存治療では、高用量黄体ホルモン療法をおこないます。黄体ホルモン製剤の内服を連日おこない、半年間を目安に継続します。治療中に定期的(約2ヶ月おき)に子宮内膜全面掻爬をおこない、治療の効果がみられるか確認をおこなっていきます。