子宮体がんの特徴的な症状は、不正性器出血(月経のある女性の場合は出血がずっと続いたり出血量が多いなど、閉経後の女性の場合は一時的もしくは持続的な性器出血がある)や水様帯下(水っぽいサラサラしたおりものが続く)などですが、全く症状がなく婦人科検診の経腟超音波検査で偶然見つかることもあります。

子宮体がんは病理検査で診断されます。
子宮内膜細胞診はほとんどの婦人科の施設で行うことができる検査ですが、偽陰性(子宮体癌があるのに子宮内膜細胞診では異常が見つからないこと)が多い検査です。
子宮内膜細胞診で異常がある場合や超音波検査で子宮体がんが疑われる場合には、子宮内膜生検という組織検査を行います。痛みを伴いますがとても重要な検査で、診断がつくまで繰り返し行うことがあります。

子宮内膜生検でも診断がつかない場合、子宮鏡下生検を行うことがあります。
子宮内にカメラを挿入して、腫瘍の一部を摘出して病理検査を行います。
一般的には全身麻酔下で行っており、入院が必要となります。


最近では、より細いカメラと腫瘍の一部摘出するための機器を用いることにより、全身麻酔が不要となり外来の日帰り手術で病理検査を行なっております。患者さんにとっては従来の子宮鏡下生検のような入院の負担がなく、外来での子宮内膜生検よりも正確な診断ができると期待されています。

 

そのほかに画像検査としては、経腟超音波検査やMRI検査、CT検査、必要時にはPET検査を行い、子宮体部の病変の大きさ、浸潤の深さ、子宮周囲への浸潤の有無、リンパ節転移や肝臓や肺などへの臓器転移がないかどうか調べます。

子宮体がんの進行期(表1)は手術をして手術中の病気の広がりの診断と摘出した病理検査結果から決めますが、画像検査によりどの程度の進行期かあらかじめ推定し、適切な術式(どの臓器をどの程度どのように摘出するか)を決めます。

 

I期 癌が子宮体部に限局するもの
IA期:癌が子宮筋層1/2未満のもの
IB期:癌が子宮筋層1/2以上のもの
II期 癌が頸部間質に浸潤するが、子宮をこえていないもの
III期 癌が子宮外に広がるが、小骨盤腔をこえないもの、また所属リンパ節へ広がるもの
IIIA期:子宮漿膜ならびに/あるいは付属器を侵すもの
IIIB期:腟ならびに/あるいは子宮傍組織へ広がるもの
IIIC期:骨盤リンパ節ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節転移があるもの
IIIC1期:骨盤リンパ節転移陽性のもの
IIIC2期:骨盤リンパ節への転移の有無にかかわらず、傍大動脈リンパ節転移陽性のもの
IV期 IVA期:膀胱ならびに/あるいは腸粘膜浸潤のあるもの
IVB期:腹腔内ならびに/あるいは鼠径リンパ節転移を含む遠隔転移のあるもの
子宮体がんの治療は手術療法が基本です。
術後に摘出物の病理組織検査(高分化型類内膜癌や漿液性癌などの組織型、筋層浸潤の程度、卵巣やリンパ節への転移の有無など)により、術後に補助療法として抗がん剤による化学療法を行うことがあります。
合併症や病状によっては手術治療をせずに放射線治療や化学療法を行う場合があります。

子宮体がんでは子宮、付属器(卵巣 卵管)、リンパ節(骨盤リンパ節、傍大動脈リンパ節)、大網(胃と横行結腸の間にある脂肪組織)を摘出します。

病状によってはリンパ節や大網の摘出を省略する場合があります。

これらの手術は長らく開腹手術で行われていましたが、最近は低侵襲手術として腹腔鏡手術やロボット支援下手術で行われることが多くなっています。

子宮体がんの高分化型と中分化型の類内膜癌でIA期と考えられる場合、低侵襲手術で子宮と付属器、骨盤リンパ節を摘出します。

その他の組織型でIA期と考えられる場合には、腹腔鏡手術で子宮と付属器と骨盤リンパ節、傍大動脈リンパ節と大網を摘出します。低侵襲手術は開腹手術と比べて出血量が少ない、傷が小さく術後の痛みが少なく、術後の腹腔内癒着がおきにくく癒着性の腸閉塞になりにくい、入院期間が短いなどのメリットがあります。

ただし体型や合併症がある場合には低侵襲手術ができないこともありますので、担当医とご相談ください。

IB期以上と考えられる場合、開腹手術となります。子宮と付属器、骨盤リンパ節を摘出し、病状により傍大動脈リンパ節や大網を摘出します。術後の入院期間は2週間程度です。

摘出物の病理組織検査の結果により、術後補助療法として抗癌剤による化学療法を追加します。海外では術後補助療法として放射線治療を追加することもありますが、日本では化学療法が主流です。
組織型と病変の広がりにより決定される子宮体がん術後再発リスク分類に基づき、再発中リスク群や再発高リスク群の患者さんには半年弱の化学療法をお勧めすることがあります。

一般的な化学療法は5時間程度の点滴治療であり、入院でも外来通院でも行うことができます。点滴治療は3〜4週間毎に計6回行うことが多いですが、化学療法の効果が確認できない場合には途中で治療を変更しますし、有効であっても効果が十分ではないときには7回以上行うこともあります。一部の卵巣がんでは維持療法として化学療法終了後に継続して点滴治療をしたり内服治療をしたりすることがありますが、子宮体がんでは維持療法は行われていません。化学療法終了後は原則的に外来経過観察となります。

子宮体がんのうち高分化型類内膜癌で筋層浸潤がないIA期の患者さんで、将来的に妊娠を希望する患者さんにはホルモン治療をご提案しています。子宮を摘出するわけではないので、より正確な診断が必要となりますので、必ず全身麻酔下に子宮内膜全面掻爬手術を行い、高分化型類内膜癌であることを確認します。筋層浸潤については造影剤を併用したMRI検査を行います。血栓症の既往がないこと、重篤な心疾患がないこと、肝障害がないことなどを確認します。肥満の患者さん、40歳以上の患者さんについては主治医とご相談ください。

ホルモン療法は毎日内服治療で半年間継続します。治療中は2ヶ月おきに病理組織検査を行い、治療効果を確認します。治療効果が見られない場合には造影MRI検査を行い、筋層浸潤を評価します。病状の進行が疑われる場合には、ホルモン治療を中止して子宮摘出をお勧めします。半年間の治療で病変が消失した場合でも、再発することが多いのがホルモン療法の特徴です。

ホルモン治療終了後は、速やかに妊娠に向けた治療(体外受精などの不妊治療)をお勧めしますが、すぐに妊娠をお考えでなければ、別の種類のホルモン治療に変更して妊娠トライするまでホルモン治療を継続します。妊娠の希望がなくなった時点で、子宮摘出手術をお勧めしております。高分化型類内膜癌の前駆病変である子宮内膜異型増殖症(AEMH、EINなどと呼ばれることもあります)でも高分化型類内膜癌で筋層浸潤がない子宮体がんIA期の患者さんと同じようにホルモン治療を行います。

治療終了後は、外来経過観察となります。
外来では、内診、経腟超音波検査、腟断端細胞診(子宮摘出後の腟の縫合部の再発を調べるための細胞診検査)、血液検査、CT検査などを行います。病状によりますが、最初の数年は1〜3ヶ月毎に受診していただきます。経過観察は当院の外来診療の他、ご紹介元の婦人科や連携している施設で診療することも可能です。主治医とご相談ください。

経過観察中に再発が見つかった場合には、病変の部位や再発までの期間に応じて、抗癌剤による化学療法や放射線治療、手術療法を行います。当院では免疫療法として免疫チェックポイント阻害薬(一般名 ペンブロリズマブ 商品名 キイトルーダ®︎)による薬物療法も行っております。免疫チェックポイント阻害薬は、マイクロサテライト(MSI)不安定性という遺伝子の変化があることが保険診療で治療する場合の条件ですので、治療前に検査により腫瘍内にマイクロサテライト不安定性があるかどうかを確認する必要があります。

再発治療として有効な治療方法がない場合には、がん遺伝子パネル検査を受けることができます。がん遺伝子パネル検査は腫瘍細胞、場合により腫瘍以外の正常細胞の遺伝子の変化を検出するもので、保険診療以外に有効な治療選択肢があるかどうか検討することができます。有効な可能性がある治療選択肢が見つかった場合には、当院もしくは連携している他の施設で治療を受けられる場合があります。